本記事では、卒論・修論の数式についてよくある修正項目を紹介いたします。
<卒論・修論でよくある修正項目>シリーズでは、初学者がよく指摘される卒論・修論の修正項目を紹介しております。<卒論・修論でよくある修正項目>シリーズの概要とコンテンツ一覧は以下のページよりご確認ください。
卒論・修論のフォーマットは、大学・学部・学科によって異なります。ここで紹介する内容は、著者が所属していた研究室のものを基本にしていますので、卒論・修論の執筆にあたっては所属研究室のフォーマットを確認し、それに準拠してください。
変数が定義されていない
使用する変数はすべて論文中で定義する必要があります。
【修正前】
運動の第二法則より、以下の式が成立する。
$$ F=ma. \tag{1} $$
【修正例1】
質点の質量を\(m\)、 加速度を\(a\)、質点に作用する力を\(F\)とすると、 運動の第二法則より、以下の式が成立する。
$$ F=ma. \tag{1} $$
【修正例2】
運動の第二法則より、以下の式が成立する。
$$ F=ma. \tag{1} $$
ここで、\(m\)は質点の質量、 \(a\)は加速度、\(F\)は質点に作用する力である。
同一の記号が複数の意味で定義されている
同じ記号を複数の意味で定義してしまわないように注意しましょう。記号を変える、添え字を付与する、大文字・小文字を変えるなどして異なる記号として定義しましょう。
【修正例1】
修正前:絶対温度を\(t\)とすると、・・・。・・・。ここで、\(t\)は時間である。
修正後:絶対温度を\(T\)とすると、・・・。・・・。ここで、\(t\)は時間である。
変数が斜体になっていない
ベクトルやテンソルを除き、変数は斜体で記載するのが一般的です。変数と文字を区別できるように、変数は斜体で記載しましょう。
【修正前】
質点の質量をm、 加速度をa、質点に作用する力をFとすると、 運動の第二法則より、以下の式が成立する。
$$ \mathrm{F=ma}. \tag{1} $$
【修正例】
質点の質量を\(m\)、 加速度を\(a\)、質点に作用する力を\(F\)とすると、 運動の第二法則より、以下の式が成立する。
$$ F=ma. \tag{1} $$
変数でない文字が斜体になっている
前述のように変数は斜体で記載する必要がありますが、添え字等については斜体(イタリック体)にする場合と立体(ローマン体)にする場合があります。添え字等についても何らかの値が代入される場合は変数として斜体にしますが、値が代入されたない文字列の場合は立体にします。
【修正前】
質点Aの質量を\(m_{A}\)、 速度を\(v_{A}\)、 質点Bの質量を\(m_{B}\)、 速度を\(v_{B}\)とすると、質点AとBの持つ総運動量\(P\)は以下の式で与えられる。
$$ P=m_{A}v_{A}+ m_{B}v_{B} . \tag{1} $$
【修正例1】
質点Aの質量を\(m_{ \mathrm{A} }\)、 速度を\(v_{ \mathrm{A} }\)、 質点Bの質量を\(m_{ \mathrm{B} }\)、 速度を\(v_{ \mathrm{B} }\)とすると、質点AとBの持つ総運動量\(P\)は以下の式で与えられる。
$$ P=m_{\mathrm{A}} v_{\mathrm{A}} + m_{\mathrm{B}}v_ {\mathrm{B}} . \tag{1} $$
【修正例2】
質点\(X\)の質量を\(m_{X}\)、 速度を\(v_{X}\)とすると、質点AとBの持つ総運動量\(P\)は以下の式で与えられる(\(X=\mathrm{A, B}\))。
$$ P=\sum_{X=\mathrm{A, B}} m_{X} v_{X} . \tag{1} $$
斜体と立体の物理定数が混在している
以下のような物理定数は、ある1つの値を表す記号であるため変数ではありません。それゆえ、物理定数は立体で書くべきとされていることがあります。ただ、物理定数については斜体で記載されていることも多く、特に指定されていなければ、斜体か立体のいずれかで統一されていれば問題ないと思います。ある物理定数は斜体、別の物理定数は立体といった混在は避けましょう。
【物理定数の例】
- 円周率:\(\pi\)
- ネイピア数:\(e\)
- 気体定数:\(R\)
- ボルツマン定数:\(k_{\mathrm{B}}\)
など
冗長な式展開が記載されている
数式の展開自体が新たな結果となる場合を除き、論文では単純な数学的式展開は不要です。要点となる式を抜粋して記載しましょう。ただし、読者が式をフォローできるように、物理的な仮定やモデルについての説明や参考文献を適切に記載してください。
【修正前】
・・・以上の事より以下の式が成立する。
$$ x^2+3x+2=0. \tag{1}$$
これを、因数分解すると、
$$ (x+2)(x+1)=0. \tag{2}$$
となるので、\( x=-1, -2 \)となる。
【修正例】
・・・以上の事より以下の式が成立する。
$$ x^2+3x+2=0. \tag{1}$$
よって、\( x=-1, -2 \)となる。
新規のモデルを用いるなどで説明が煩雑になる場合には、本文には簡潔なモデルの説明と主要な式を記載し、詳細なモデルの説明は付録に記載しても構いません。この場合は、本文にて付録にまとめていることに言及しましょう。