本記事では、A-B二元系合金の二相平衡の条件式(共通接線則)について導出過程をまとめます。
Webページ上では要点のみを示しますので、細かな式展開については本ページ下部のpdfファイルをご確認ください。
共通接線則
A-B二元系合金において\(\mathrm{\alpha }\)相と\(\mathrm{\beta}\)相の二相が存在している場合を考えます。
系のギブスエネルギー
この系のギブスエネルギー\(G\)は以下の式で与えられます。
$$
G=\left( n_{\mathrm{A}} ^{\mathrm{\alpha}} +n_{\mathrm{B}} ^{\mathrm{\alpha}} \right) g ^{\mathrm{\alpha}} + \left( n_{\mathrm{A}} ^{\mathrm{\beta}} +n_{\mathrm{B}} ^{\mathrm{\beta}} \right) g ^{\mathrm{\beta}} \tag{1-1}
$$
ここで、\(n_{X} ^{P}\)は相\(P\)中の成分\(X\)の物質量、\(g ^P\)は単位物質量当たりの相\(P\)のギブスエネルギーです。
導出に用いる関係式
二相平衡の条件式は、以下の条件下で\(G\)の最小化を考える事で得ることができます。
$$
n_{X} ^{\mathrm{\alpha}} + n_{X} ^{\mathrm{\beta}} =n_X =\mathrm{const.} \tag{1-2}
$$
最小化と極小化は異なる概念ですが、実世界では多くの場合、極小値のいずれかが最小値に一致します。そこで、平衡条件の導出では\(G\)の極小化条件(Eq. (1-3))を考えます。
$$
{{\left( \frac{\partial G}{\partial n_{\text{A}}^{\alpha}} \right)}_{n_{\text{B}}^{\alpha}}}={{\left( \frac{\partial G}{\partial n_{\text{B}}^{\alpha}} \right)}_{n_{\text{A}}^{\alpha}}}=0 \tag{1-3}
$$
ここで、\(g ^P\)は相\(P\)中の成分\(X\)の濃度\(c_{X} ^{P}\)に依存しており、\(c_{X} ^{P}\)は\(n_{X} ^{P}\)との間にEq. (1-4)の関係があります。
$$
c_{X}^{P}=\frac{n_{X}^{P}}{n_{\text{A}}^{P}+n_{\text{B}}^{P}} \tag{1-4}
$$
二相平衡の条件式
Eq. (1-3)を解くと、二相平衡の条件式(Eqs. (1-5, 1-6))が得られます。
計算手順の詳細は当ページ下部のpdfファイルをご確認ください。
$$
\frac{\text{d}{{g}^{\alpha}}}{\text{d}c_{\text{B}}^{\alpha}}=\frac{\text{d}{{g}^{\beta}}}{\text{d}c_{\text{B}}^{\beta}} \tag{1-5}
$$
$$
{{g}^{\alpha}}-{{g}^{\beta}}=\frac{\text{d}{{g}^{\alpha}}}{\text{d}c_{\text{B}}^{\alpha}}\left( c_{\text{B}}^{\alpha}-c_{\text{B}}^{\beta} \right) \tag{1-6}
$$
共通接線との関係
Eqs. (1-5, 1-6)は数学的には2つの曲線\(g ^{\mathrm{\alpha}}, g ^{\mathrm{\beta}}\)の共通接線に対応しています。それゆえ、Eqs. (1-5, 1-6)は共通接線則と呼ばれています。
共通接線との対応については当ページ下部のpdfファイルをご確認ください。
詳細な式展開(PDFファイル)
共通接線則の導出(物質量から定式化)
なぜ「共通接線」則と呼ばれるのか
関連資料
濃度と相分率を用いた共通接線則の導出
共通接線則の別パターンの導出を以下のページで紹介しております。