べき関数の微分(導出)

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べき関数の微分

以下のようなべき関数\(f(x)\)の微分は、以下のように表現されます。

$$ f(x)=ax^n \tag{1}$$

$$ f'(x)=\frac{\mathrm{d}f}{\mathrm{d}x}=anx^{n-1} \tag{2} $$

ただし、\( a, n\)は実数です。

Eq. (2)は基本的な微分に関する関係式であり、よく利用される関係式です。

このページでは、Eq. (2)の導出を示します。Eq. (2)は基本的な関係式ですが、\(n\)が実数の時の証明には対数微分法を用いますので、数学Ⅲを履修している必要があります。そこで、本ページでは、まず、数学Ⅱまでの範囲で証明が可能な\(n\)が正の整数、負の整数、零である場合について導出を行い、最後に\(n\)が実数の場合についての導出を行います。対数関数の微分を理解されている方は、\(n\)が実数のときが最も一般的な条件となりますので、\(n\)が正の整数、負の整数、零のときについては読み飛ばしても差し支えありません。

\(n\)が正の整数の場合

微分の定義に基づくと、\(f(x)\)の微分は、

$$ \frac{\mathrm{d}f}{\mathrm{d}x}=\lim_{h \rightarrow \pm0} \frac{f(x+h)-f(x)}{h} \tag{1.1}$$

によって与えられます。ここにEq. (1)を代入すると、

$$ \frac{\mathrm{d}f}{\mathrm{d}x}=\lim_{h \rightarrow \pm0} \frac{a(x+h)^n-ax^n}{h} $$

となります。二項定理を用いると、

$$
\begin{eqnarray}
(x+h)^n&=&\sum_{k=0}^{n} {}_n C_k x^{n-k} h^{k} \\
&=&\sum_{k=1}^{n} {}_n C_k x^{n-k} h^{k} + {}_n C_0 x^{n}h^0 \\
&=&\sum_{k=1}^{n} {}_n C_k x^{n-k} h^{k} + x^{n}
\end{eqnarray}
$$

とできるので、

$$
\begin{eqnarray}
\frac{a(x+h)^n-ax^n}{h}&=& a \frac{ \sum_{k=1}^{n} {}_n C_k x^{n-k} h^{k} + x^{n}-x^n}{h} \\
&=& a \frac{ \sum_{k=1}^{n} {}_n C_k x^{n-k} h^{k}}{h} \\
&=& a \sum_{k=1}^{n} {}_n C_k x^{n-k} h^{k-1} \\
&=& a \sum_{k=0}^{n-1} {}_n C_{k+1} x^{n-k} h^{k} \\
&=& a \sum_{k=1}^{n-1} {}_n C_{k+1} x^{n-k} h^{k} + a{}_n C_1 x^{n} h^{0} \\
&=& a \sum_{k=1}^{n-1} {}_n C_{k+1} x^{n-k} h^{k} + an x^{n}
\end{eqnarray}
$$

とできます。よって、Eq. (1.1)は、

$$
\begin{eqnarray}
\frac{\mathrm{d}f}{\mathrm{d}x}&=& \lim_{h \rightarrow \pm0} a \sum_{k=1}^{n-1} {}_n C_{k+1} x^{n-k} h^{k} + an x^{n} \\
&=& an x^{n}
\end{eqnarray}
$$

となり、Eq. (2)が導かれます。

\(n\)が負の整数の場合

\(n\)なので、正の整数\(m[latex]を用いて、

$$ n=-m \tag{2.1}$$

$$ g(x)=x^m $$

とすると、

$$ f(x)=x^{-m}=\frac{1}{x^m}=\frac{1}{g(x)} $$

となります。分数関数の微分を用いると、

$$ \frac{\mathrm{d}f}{\mathrm{d}x}=\frac{1}{g(x)^2} \left( -\frac{\mathrm{d}g}{\mathrm{d}x} \right) $$

となります。[latex]g(x)\)の微分については、前節でEq. (2)が成立することを示しているので、

$$ \frac{\mathrm{d}g}{\mathrm{d}x}=mx^{m-1} $$

となります。これを代入すると、

$$
\begin{eqnarray}
\frac{\mathrm{d}f}{\mathrm{d}x}&=&\frac{1}{g(x)^2} \left( -mx^{m-1} \right) \\
&=& \frac{-mx^{m-1}}{x^{2m}} \\
&=& -mx^{m-1-2m} \\
&=& -mx^{-m-1} \\
\end{eqnarray}
$$

となります。Eq. (2.1)を用いると、

$$ \frac{\mathrm{d}f}{\mathrm{d}x}=nx^{n-1} $$

となり、Eq. (2)が導かれます。

\(n\)が零の場合

\(f(x)\)は、

$$ f(x)=ax^0=a $$

となり、定数となるため、

$$ \frac{\mathrm{d}f}{\mathrm{d}x}=0 $$

となり、Eq. (2)が成立します。

\(n\)が実数の場合

Eq. (1)の両辺に自然対数を取ります(高校数学では自然対数の記号としてlogを用いますが、大学以上ではlnという記号を用いることが多いので、本ページでは自然対数の記号としてlnを用います)。

$$ \ln f= \ln \left( ax^n \right) $$

対数関数の性質を用いると、

$$ \ln \left( x^n \right)=\ln a + \ln x^n=\ln a + n \ln x $$

となるので、Eq. (1)は、

$$ \ln f=n \ln x +\ln a $$

と改められます。両辺の微分を計算すると、

$$ \frac{\mathrm{d} \ln f}{\mathrm{d}x}=\frac{1}{f}\frac{\mathrm{d}f}{\mathrm{d}x} $$

$$ \frac{\mathrm{d} \left( n \ln x +\ln a \right) }{\mathrm{d}x}=n\frac{\mathrm{d} \ln x}{\mathrm{d}x}=n\frac{1}{x} $$

となります。よって、

$$ \frac{1}{f}\frac{\mathrm{d}f}{\mathrm{d}x}=n\frac{1}{x} $$

が成立するので、両辺に\(f(x)\)をかけると、

$$
\begin{eqnarray}
\frac{\mathrm{d}f}{\mathrm{d}x}&=& f(x) n\frac{1}{x} \\
&=& n x^n \frac{1}{x} \\
&=& n x^{n-1}
\end{eqnarray}
$$

となり、Eq. (2)が導かれます。


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