三角関数を用いた複素数の表現
任意の複素数\(z\)は、三角関数を用いて以下のように表現することができます。
$$ z=x+iy=r \left( \cos \theta +i \sin \theta \right) $$
\( x, y, \theta, r\)は実数です。
ここで、2つの複素数\(z_1, z_2\)を
$$ z_k=r_k \left( \cos \theta_k +i \sin \theta_k \right) \tag{1}$$
と表現すると、この2数の積と商は以下のようになることが知られています。
$$ z_1 \times z_2=r_1 r_2 \left\{ \cos \left( \theta_1 +\theta_2 \right) +i \sin \left( \theta_1 +\theta_2 \right)\right\} \tag{2}$$
$$ \frac{z_1}{z_2}=\frac{r_1}{r_2} \left\{ \cos \left( \theta_1 -\theta_2 \right) +i \sin \left( \theta_1 -\theta_2 \right)\right\} \tag{3}$$
本ページではこの式の導出(証明)を記します。また、導いたEq. (2)を用いて\(n\)が自然数の場合でド・モアブルの定理を証明します。
【ド・モアブルの定理】
$$ (\cos \theta+i \sin \theta)^n=\cos n \theta + i \sin n \theta \tag{4}$$
Eq. (2)の証明
\(z_1 \times z_2\)にEq. (1)を代入し展開すると、
$$
\begin{eqnarray}
z_1 \times z_2 &=& r_1\left( \cos \theta_1+ i \sin \theta_1 \right) \times r_2 \left( \cos \theta_2 +i \sin \theta_2 \right) \\
&=& r_1 r_2\left\{ \cos \theta_1 \cos \theta_2 +i^2 \sin \theta_1 \sin \theta_2+ i \left( \sin \theta_1 \cos \theta_2 + \cos \theta_1 \sin \theta_2 \right) \right\} \\
&=& r_1 r_2\left\{ \cos \theta_1 \cos \theta_2 – \sin \theta_1 \sin \theta_2+ i \left( \sin \theta_1 \cos \theta_2 + \cos \theta_1 \sin \theta_2 \right) \right\}
\end{eqnarray}
$$
となります。この式に三角関数の加法定理を用いると、
$$ z_1 \times z_2 = r_1 r_2\left\{ \cos \left( \theta_1 + \theta_2 \right) + i \sin \left( \theta_1 +\theta_2 \right) \right\} $$
となり、Eq. (2)が導けます。
Eq. (3)の証明
\(\frac{z_1}{z_2}\)にEq. (1)を代入し展開すると、
$$
\begin{eqnarray}
\frac{z_1}{z_2} &=& \frac{r_1\left( \cos \theta_1+ i \sin \theta_1 \right)}{r_2 \left( \cos \theta_2 +i \sin \theta_2 \right)} \\
&=& \frac{r_1}{r_2} \frac{\cos \theta_1+ i \sin \theta_1}{\cos \theta_2+ i \sin \theta_2}
\end{eqnarray}
$$
となります。分子と分母に\({\cos \theta_2- i \sin \theta_2}\)をかけると
$$
\begin{eqnarray}
\frac{z_1}{z_2} &=& \frac{r_1}{r_2} \frac{\left( \cos \theta_1+ i \sin \theta_1 \right) \left( \cos \theta_2- i \sin \theta_2 \right)}{\left( \cos \theta_2+ i \sin \theta_2 \right)\left( \cos \theta_2- i \sin \theta_2 \right)} \\
&=& \frac{r_1}{r_2} \frac{\cos \theta_1 \cos \theta_2 – i^2 \sin \theta_1 \sin \theta_2+ i \left( -\cos \theta_1 \sin \theta_2 + \sin \theta_1 \cos \theta_2 \right)}{\left( \cos^2 \theta_2- i^2 \sin^2 \theta_2 \right)} \\
&=& \frac{r_1}{r_2} \frac{\cos \theta_1 \cos \theta_2 + \sin \theta_1 \sin \theta_2+ i \left( -\cos \theta_1 \sin \theta_2 + \sin \theta_1 \cos \theta_2 \right)}{\left( \cos^2 \theta_2 + \sin^2 \theta_2 \right)}
\end{eqnarray}
$$
となります。この式に三角関数の加法定理と\(\sin^2 \theta+ \cos^2 \theta=1\)を用いると、
$$ \frac{z_1}{z_2}=\frac{r_1}{r_2} \left\{ \cos \left( \theta_1 – \theta_2 \right) + i \sin \left( \theta_1 – \theta_2 \right) \right\} $$
となり、Eq. (3)が導けます。
ド・モアブルの定理の証明
ここでは簡単のため\(n\)を自然数としてド・モアブルの定理を数学的帰納法により証明します。
(i) \(n=1\)のとき、
$$ (\cos \theta + i \sin \theta)^1=\cos \theta + i \sin \theta $$
より、Eq. (4)が成立します。
(ii) \(n=k\)のとき、Eq. (4)が成立すると仮定すると、
$$ (\cos \theta + i \sin \theta)^k=\cos k\theta + i \sin k\theta \tag{3.1}$$
となります。
\(n=k+1\)のとき、
$$ (cos \theta + i \sin \theta)^{k+1}=(\cos \theta + i \sin \theta)^{k} \times (\cos \theta + i \sin \theta) $$
となるので、Eqs. (3.1), (2)を用いると、
$$
\begin{eqnarray}
(\cos \theta + i \sin \theta)^{k+1}&=&(\cos k\theta + i \sin k\theta) \times (\cos \theta + i \sin \theta) \\
&=& \cos \left( k+1 \right) \theta + i \sin \left( k+1 \right) \theta
\end{eqnarray}
$$
となるため、Eq. (4)が成立します。
以上(i), (ii)より、数学的帰納法により任意の自然数\(n\)についてEq. (4)が成立することが示されました。
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