本記事では、高校生向けに対数微分法について解説します。
対数微分法では、与えられた関数の微分を求めるにあたり、一度関数の対数をとり、それを微分することで元の関数の微分を求めます。
対数微分法を用いると、指数関数など様々な関数の微分を簡単に計算することができます。
対象読者:高校生
【注意事項】
- 本記事では自然対数を\(\log\)ではなく、\(\ln\)と表現します。
対数微分法に関わる関係式の導出
対数微分法では、以下の任意の関数\(f(x)\)の対数をとったのち微分を行います。
$$ y=f(x) \tag{1} $$
自然対数をとります。ここで、\(\ln\)は自然対数を意味します。
$$ \ln y=\ln \left( f(x) \right) $$
微分します。
$$ \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}x} \ln y= \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}x} \ln \left( f(x) \right) $$
合成関数の微分を用いて、左辺を変形します。
合成関数の微分(連鎖律)
$$ \frac{\mathrm{d}y(u)}{\mathrm{d}x} =\frac{\mathrm{d}y(u)}{\mathrm{d}u} \frac{\mathrm{d}u(x)}{\mathrm{d}x}\tag{2} $$
$$ \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}x} \ln y=\left(\frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}y}\ln y \right) \frac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x} $$
対数関数の微分を用いると、右辺の()内は以下のようになります。
対数関数の微分
$$ \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}x} \ln x =\frac{1}{x} \tag{3} $$
$$ \left(\frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}y}\ln y \right)=\frac{1}{y} $$
以上の式を整理すると以下の式が成立します。
$$ \frac{1}{y}\frac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}= \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}x} \ln \left( f(x) \right) $$
両辺に\(y\)をかけると、以下の関係式が導かれます。
$$ \frac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}=y \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}x} \ln \left( f(x) \right) \tag{4} $$
Eq. (1)を用いて右辺の\(y\)を消去すると、対数微分法の要となる関係式が得られます。
$$ \frac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}=f(x) \left\{ \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}x} \ln \left( f(x) \right) \right\} \tag{5} $$
対数微分法の利用例
指数関数の微分
以下の指数関数の微分を考えます。
$$ y=f(x)=e^x \tag{1-1} $$
Eq. (1-1)に対して、自然対数をとると以下の式が成立します。
$$ \ln \left( f(x) \right) =x \tag{1-2} $$
Eq. (5)にEqs. (1-1, 1-2)を代入します。
$$ \frac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}=e^x \left( \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}x} x \right)=e^x $$
このようにして指数関数の微分が求められます。
$$ \frac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}=e^x \tag{1-3} $$
指数関数の微分については以下の記事も合わせてご確認ください。
べき関数の微分
以下のべき関数の微分を考えます。
$$ y=f(x)=x^n \tag{2-1} $$
ここで、\(n\)は定数です。
Eq. (2-1)に対して、自然対数をとると以下の式が成立します。
$$ \ln \left( f(x) \right) =n \ln x \tag{2-2} $$
Eq. (5)にEqs. (2-1, 2-2)を代入します。
$$
\begin{eqnarray}
\frac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}
&=& x^n \left( \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}x} n \ln x \right) \\
&=& n x^n \frac{1}{x} \\
&=& n x^{n-1}
\end{eqnarray}
$$
この式の変形にはEq. (3)を用いました。
このようにしてべき関数の微分が求められます。
$$ \frac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}=n x^{n-1} \tag{2-3} $$
べき関数の微分については以下の記事も合わせてご確認ください。
\(x^x\)の微分
以下の関数の微分を考えます。
$$ y=f(x)=x^x \tag{3-1} $$
ここで、\(n\)は定数です。
Eq. (3-1)に対して、自然対数をとると以下の式が成立します。
$$ \ln \left( f(x) \right) =x \ln x \tag{3-2} $$
Eq. (5)にEqs. (3-1, 3-2)を代入します。
$$ \frac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x} = x^x \left( \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}x} x \ln x \right) $$
関数の積の微分を用いて右辺の()内の式を変形します。
関数の積の微分
$$ \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}x}f(x)g(x)= \frac{\mathrm{d}f}{\mathrm{d}x} g+ f\frac{\mathrm{d}g}{\mathrm{d}x} \tag{3-3}$$
$$
\begin{eqnarray}
\frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}x} x \ln x
&=& \left( \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}x} x \right) \ln x +x \left( \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}x} \ln x \right) \\
&=& \ln x +x \frac{1}{x} \\
&=& \ln x +1 \\
\end{eqnarray}
$$
この式の変形にはEq. (3)を用いました。
これらを整理すると以下の式が得られます。
$$ \frac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x} = x^x \left( \ln x +1 \right) \tag{3-4} $$