等比数列とその和
等比数列は初項を\(a_1\)、公比を\(r\)としたときに第\(n\)項が以下の式で与えられる数列です。
$$a_n=a_1 r^{n-1} \tag{1}$$
漸化式の形式では以下のように表現されます。
$$a_{n+1}=ra_n \tag{2}$$
この等比数列{\(a_n\)}の第1項から第\(n\)項までの和\(S_n\)は、等比数列の和の公式として以下の式で与えられることが知られています。
$$S_n=\sum_{k=1}^n a_k=a_1 \frac{1-r^n}{1-r} \tag{3}$$
この式は一見複雑で、公式として暗記しているの学生も多いのではないでしょうか?
実はこの式は簡単に導出することができます。導出過程を理解しておくと、万が一、Eq. (3)を忘れてしまったり、式が曖昧になってしまった場合でも、容易に式を導くことができますので、是非、導出を抑えておきましょう。
和の公式の導出
Eq. (3)の導出にあたってはまず、\(S_n\)に\((1-r)\)をかけた量を考えます。
$$ S_n (1-r)=\sum_{k=1}^n a_k (1-r)$$
\(\sum_{k=1}^n a_k\)は展開して記述すると、
$$ \sum_{k=1}^n a_k=\left( a_1 + a_2 + \cdots + a_n \right) $$
となります。ここに、Eq. (1)を代入すると、
$$ \sum_{k=1}^n a_k=\left( a_1 + a_1r + \cdots + a_1 r^{n-1} \right)=a_1\left( 1 + r + \cdots + r^{n-1} \right) $$
となります。よって、\(S_n (1-r)=\sum_{k=1}^n a_k (1-r)\)を展開して記述すると、
$$
\begin{eqnarray}
S_n (1-r)&=&a_1\left( 1 + r + \cdots + r^{n-1} \right) \times (1-r) \\
&=& a_1\left( 1 + r + \cdots + r^{n-1} \right)-a_1\left( 1 + r + \cdots + r^{n-1} \right)r \\
&=& a_1\left\{ \left( 1 + r + \cdots + r^{n-1} \right)-\left( r + r^2 + \cdots + r^n \right) \right\} \\
&=& a_1\left( 1-r^n \right)
\end{eqnarray}
$$
と変形できます。\(r \neq 1\)として、\((1-r)\)で両辺を割るとEq. (3)が得られます。
$$S_n = a_1\frac{1-r^n}{1-r}$$
導出2 (総和記号を用いた変形)
前節では総和記号\(\sum\)を展開し式を変形しました。ここでは、式を展開せずに総和記号で記述したまま式を変形して導出を行います。数学的には前節と等価ですが、高校生や学部1, 2年生は総和記号の取り扱いに慣れていない方も多くいらっしゃるので、下記は総和記号になれるのに良い題材だと思います。
$$ S_n (1-r)=\sum_{k=1}^n a_k (1-r)$$
にEq. (1)を代入すると、
$$S_n (1-r)=(1-r)\sum_{k=1}^n a_1r^{k-1} $$
となります。よって、掛け算の分配法則を用いると、
$$
\begin{eqnarray}
S_n (1-r)&=&\sum_{k=1}^n a_1r^{k-1}-r\sum_{k=1}^n a_1r^{k-1} \\
&=& \sum_{k=1}^n a_1r^{k-1}-\sum_{k=1}^n a_1r^{k}
\end{eqnarray}
$$
が得られます。右辺の第2項について、総和の添え字を調整すると、
$$ \sum_{k=1}^n a_1r^{k}=\sum_{k=2}^{n+1} a_1r^{k-1} $$
となります。さらに、\(n \geq 2\)として、総和記号から部分的に項を取り出すと、
$$ \sum_{k=1}^n a_1r^{k-1}=a_1r^{1-1}+\sum_{k=2}^n a_1r^{k-1}= a_1+\sum_{k=2}^n a_1r^{k-1}$$
$$ \sum_{k=2}^{n+1} a_1r^{k-1}=\sum_{k=2}^{n} a_1r^{k-1}+a_1r^{n+1-1}=\sum_{k=2}^{n} a_1r^{k-1}+a_1r^{n} $$
と変形できます。これらの関係式より、
$$
\begin{eqnarray}
S_n (1-r)&=& a_1+\sum_{k=2}^n a_1r^{k-1}-\left( \sum_{k=2}^{n} a_1r^{k-1}+a_1r^{n} \right) \\
&=& a_1-\left(a_1r^{n} \right) \\
&=& a_1\left(1-r^{n} \right)
\end{eqnarray}
$$
となります。\(r \neq 1\)として、\((1-r)\)で両辺を割るとEq. (3)が得られます。
$$S_n = a_1\frac{1-r^n}{1-r}$$
最後に、この導出過程では\(n \geq 2\)としたため、\(n=1\)でも成立することを確認します。
\(n=1\)のとき上式は、
$$ S_1 = a_1\frac{1-r}{1-r}=a_1$$
となり、\(S_1=a_1\)が成立するため、Eq.(3)が\(n=1\)でも成立します。
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