等比数列の和の公式を総和記号を用いて導出

本記事では、等比数列の和を総和記号を用いたまま導く方法を紹介します。

等比数列の和の公式の導出は、教科書などで、よく総和記号\(\sum\)を展開した説明が掲載されています。

本稿では、まず、この総和記号を展開した導出過程を示し、その後、総和記号を展開せずに導出を行う方法を記します。

総和記号の使い方の良き演習になると思いますので、是非、一緒に導出してみてください。

本記事の関連分野

高校数学:数列、総和記号、極限

目次

等比数列とその和

等比数列と、その和の公式を示します。

等比数列

\[ a_n=a_1 r^{n-1} \tag{1} \]

等比数列の漸化式形式

\[ a_{n+1}=r a_n \tag{2} \]

等比数列の和

\[ S_n=\sum_{k=1}^n a_k=a_1 \frac{1-r^n}{1-r} \tag{3} \]

ここで、\(a_1\)が初項、\(r\)が公比(\(r \neq 1\))、\(a_i\)が\(i\)番目の項、\(S_n\)は第1項から第\(n\)項までの和です。

本稿では、等比数列の和(Eq. 3)の導出について解説します。

この式は、一見複雑で、公式として暗記している方も多いのではないでしょうか?

実はこの式は簡単に導出することができます。

導出過程を理解しておくと、万が一、式を忘れてしまったり、式が曖昧になってしまった場合でも、容易に式を導くことができるので、是非、導出過程を理解しておきましょう。

総和記号を展開した導出

まず教科書等によく記載されている、総和記号を用いない導出を示します。

\(S_n\)は、数列{\(a_n\)}の}第1項から第\(n\)項までの和なので、以下のようにあらわすことができます。

\[ S_n=a_1+a_2+ \cdots + a_n \tag{2-1} \]

Eq. (3)の導出では、これに\( (1-r) \)をかけた\( (1-r) S_n \)を考えます。

\( (1-r) S_n \)は以下の変形できます。

展開

\[ (1-r) S_n=S_n-r S_n \]

Eq. (2-1)を代入

\[ (1-r) S_n=a_1+a_2+ \cdots + a_n-r(a_1+a_2+ \cdots + a_n) \]

Eq. (1)を代入して整理

\[
\begin{eqnarray}
(1-r) S_n
&=& a_1+a_1 r+ \cdots + a_1 r^{n-1} – r(a_1+a_1 r+ \cdots + a_1 r^{n-1} ) \\
&=& a_1+a_1 r+ \cdots + a_1 r^{n-1} – (a_1 r+a_1 r^2+ \cdots + a_1 r^{n} ) \\
&=& a_1+a_1 r+ \cdots + a_1 r^{n-1} – (a_1 r+ \cdots + a_1 r^{n-1}+ a_1 r^{n} ) \\
&=& a_1 – ( a_1 r^{n} ) \\
&=& a_1 \left( 1 – r^{n} \right) \\
\end{eqnarray}
\]

最後に、\(r \neq 1\) として、両辺を\( (1-r) \)で割ると、Eq. (3)が得られます。

\[ S_n= a_1 \frac{1 – r^{n}}{1-r} \tag{3} \]

総和記号を用いた導出

続いて、総和記号を残したまま、展開せずに計算する方法を示します。

具体的な計算内容は、前節と等価ですが、総和記号を取り扱う良き演習になると思いますので、是非一緒に導出をしてみてください。

総和記号の基本関係式

式変形には、以下の総和記号に関する基本関係式を使用します。

総和記号に関する基本関係式
定数倍

\[ b \sum_{k=m}^n a_k = \sum_{k=m}^n b a_k \tag{3-1} \]

二つの総和記号の和

\[ \sum_{k=m}^n a_k + \sum_{k=m}^n c_k = \sum_{k=m}^n (a_k+c_k) \tag{3-2} \]

添え字の数字をずらす

\[ \sum_{k=m}^n a_k = \sum_{k=m+p}^{n+p} a_{k-p} \tag{3-3} \]

最初あるは最後の項を分離(\(m<n\)の場合)

\[ \sum_{k=m}^n a_k = a_m + \sum_{k=m+1}^n a_k = \sum_{k=m}^{n-1} a_k + a_n \tag{3-4} \]

導出

この導出では、途中の式変形の都合で\( n \geq 2 \)の場合を考えます。

総和記号を用いると、Eq. (2-1)は以下のようになります。

\[ S_n=\sum_{k=1}^n a_k \tag{3-5} \]

先ほどと同様に、\( (1-r) \)をかけた\( (1-r) S_n \)を考えると、以下のように変形できます。

展開

\[ (1-r) S_n=S_n-r S_n \]

Eq. (3-5)を代入

\[ (1-r) S_n=\sum_{k=1}^n a_k-r \left( \sum_{k=1}^n a_k \right) \]

Eq. (1)を代入

\[ (1-r) S_n=\sum_{k=1}^n a_1 r^{k-1} -r \left( \sum_{k=1}^n a_1 r^{k-1} \right) \]

Eq. (3-1)で変形

\[ (1-r) S_n=\sum_{k=1}^n a_1 r^{k-1} – \left( \sum_{k=1}^n a_1 r^{k} \right) \]

Eq. (3-3)を用いて、後半の総和記号の添え字を変更

\[ (1-r) S_n=\sum_{k=1}^n a_1 r^{k-1} – \left( \sum_{k=2}^{n+1} a_1 r^{k-1} \right) \]

Eq. (3-4)を用いて、前半の総和記号の最初の項と後半の総和記号の最後の項を分離

\[
\begin{eqnarray}
(1-r) S_n
&=& a_1+\sum_{k=2}^n a_1 r^{k-1} – \left( \sum_{k=2}^{n} a_1 r^{k-1} + a_1 r^n \right) \\
&=& a_1+\sum_{k=2}^n a_1 r^{k-1} – \sum_{k=2}^{n} a_1 r^{k-1} – a_1 r^n \\
\end{eqnarray}
\]

Eq. (3-2)を用いて、式を整理する。

\[
\begin{eqnarray}
(1-r) S_n
&=& a_1+\sum_{k=2}^n \left( a_1 r^{k-1} – a_1 r^{k-1} \right)- a_1 r^n\\
&=& a_1 – a_1 r^{n} \\
&=& a_1 \left( 1 – r^{n} \right) \\
\end{eqnarray}
\]

\(r \neq 1\) として、両辺を\( (1-r) \)で割ると、Eq. (3)が得られます。

\[ S_n= a_1 \frac{1 – r^{n}}{1-r} \tag{3} \]

最後に、この導出過程では\(n \geq 2\)としたため、\(n=1\)でも成立することを確認します。

\(n=1\)のときEq. (3)は以下のようになります。

\[ S_1 = a_1\frac{1-r}{1-r}=a_1 \]

\(S_1=a_1\)が成立するため、Eq.(3)は\(n=1\)でも成立します。

\(r\)=1のとき等比数列の和はどうなるか?

等比数列の和(Eq. (3))には、分母に\(1-r\)があるため、\(r\)=1が定義域となります。

では、\(r \rightarrow 1\)の極限でEq. (3)はどうなるのでしょうか?

ここでは、この極限について考えてみます。

\(r\)=1の数列

まず、\(r\)=1の場合の数列について、考えておきます。

この数列は、初項\(a_1\)、公比\(0\)の等差数列と等価です。

そのため、\(S_n\)は以下のように計算できます。

\[ S_n=a_1 n \tag{4-1} \]

等比数列の和の極限

続いて、Eq. (3)の\(r \rightarrow 1\)極限を考えます。

\(h=r-1\)とすると、以下のように変形できます。

\[ \lim_{r \rightarrow 1}a_1 \frac{1-r^n}{1-r}= \lim_{h \rightarrow 0}a_1 \frac{1-(1+h)^n}{-h} \]

\((1+h)^n\)は2項定理を用いると以下のように変形できます。

\[ (1+h)^n=\sum_{k=0}^n {}_n \mathrm{C}_k h^k \]

これを代入すると以下のように変形できます。

代入

\[ \lim_{r \rightarrow 1}a_1 \frac{1-r^n}{1-r}= \lim_{h \rightarrow 0}a_1 \frac{1-\sum_{k=0}^n {}_n \mathrm{C}_k h^k}{-h} \]

Eq. (3-4)を用いて、最初の項を分離

\[
\begin{eqnarray}
\lim_{r \rightarrow 1}a_1 \frac{1-r^n}{1-r}
&=& \lim_{h \rightarrow 0}a_1 \frac{1-{}_n \mathrm{C}_0 h^0-\sum_{k=1}^n {}_n \mathrm{C}_k h^k}{-h} \\
&=& \lim_{h \rightarrow 0}a_1 \frac{1-1-\sum_{k=1}^n {}_n \mathrm{C}_k h^k}{-h} \\
&=& \lim_{h \rightarrow 0}a_1 \frac{-\sum_{k=1}^n {}_n \mathrm{C}_k h^k}{-h} \\
&=& \lim_{h \rightarrow 0}a_1 \frac{1}{h}\sum_{k=1}^n {}_n \mathrm{C}_k h^k \\
\end{eqnarray}
\]

Eq. (3-1)で変形

\[ \lim_{r \rightarrow 1}a_1 \frac{1-r^n}{1-r}= \lim_{h \rightarrow 0}a_1 \sum_{k=1}^n {}_n \mathrm{C}_k h^{k-1} \]

再びEq. (3-4)を用いて、最初の項を分離

\[
\begin{eqnarray}
\lim_{r \rightarrow 1}a_1 \frac{1-r^n}{1-r}
&=& \lim_{h \rightarrow 0}a_1 \left({}_n \mathrm{C}_1 h^0+ \sum_{k=2}^n {}_n \mathrm{C}_k h^{k-1} \right) \\
&=& \lim_{h \rightarrow 0}a_1 \left(n+ \sum_{k=2}^n {}_n \mathrm{C}_k h^{k-1} \right) \\
\end{eqnarray}
\]

極限を計算

\[
\begin{eqnarray}
\lim_{r \rightarrow 1}a_1 \frac{1-r^n}{1-r}
&=& a_1 \left(n+ \sum_{k=2}^n {}_n \mathrm{C}_k 0^{k-1} \right) \\
&=& a_1 \left(n+ \sum_{k=2}^n 0 \right) \\
&=& a_1 n \\
\end{eqnarray}
\]

このように、等比数列の和の\(r \rightarrow 1\)極限は、Eq. (4-1)に一致します。

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